トム・ハンクス、デンゼル・ワシントンの共演で描かれた社会派ドラマ。今日、何気なくテレビを点けたらちょうどこの映画が始まるところでした。それから引き込まれるように最後まで観てしまいました。
最初にこの作品を観たのはレンタルビデオ化されて間もない頃ですから、多分今から14年位前のことだと思います。その頃の僕はちょうど人生の大きな曲がり角に差し掛かっていた頃。映画の題材ともなっている“エイズに対する偏見”はその頃の僕の中にも強くあったように思います。この作品で“無知の恐ろしさ”というものをつくづく思い知ったわけですが、別な言い方をすると、あの頃は“エイズという病気の怖さ”に対してばかり意識がいってしまい、社会という大きな枠の中で起こり得る“差別の一例”としては捉えることが出来ませんでした。
いろんな経験を重ねてゆくうちに人は物事の捉え方が変わってゆくもの。今回の鑑賞ではラスト近くの場面から涙が止まらなくなってしまいました。それは一人ひとりがそれぞれの人生の中で必死に戦いながら生きていることに対して共感出来るようになったということなのかもしれませんね。それが世に云う“年を重ねて涙脆くなった”ということなのであれば、それもちょっと悪くないな、なんて思います。まぁそう感じるくらいあの頃の僕は人のことに無頓着だった。
昔観た映画を何年か経ってから観直してみると自分の変化に気づかされることもあり、非常に興味深いものであります。そんなわけで「フィラデルフィア」はA級のヒューマンドラマ。ちなみに監督のジョナサン・デミは「羊たちの沈黙」のメガホンを執った人。10年の年月を経てデンゼル・ワシントンと再びコンビを組み、「クライシス・オブ・アメリカ」を撮りました。それから、後に「エビータ」「マスク・オブ・ゾロ」で大ブレイクしたアントニオ・バンデラスもここではゲイ役で出ていたりします。“法廷モノ”がお好きな方にもお奨め☆☆☆。