1968年に公開された「猿の惑星」のラストシーンは衝撃的でした。猿が人間を支配する星へ辿り着いてしまった宇宙飛行士。最後の希望を抱いて宇宙ロケットを探しに出た海で彼が見たものは傾きながら海辺に突き刺さる“自由の女神”の姿でした。しかしそれは本当の“絶望”ではなかった、と感じさせてくれるのがこの「ミスト」という作品。これ程までに“絶望”というものを見事に表現しきった作品は他にないのではないか、というのが観終わった後の感想でした。
“霧の中に潜む怪物”に恐れる人々。しかしこの世界で疑心暗鬼に陥った時の人間の心にさらなる恐ろしさを感じた人も多かったはず。そしてこの映画の主題とも思える「人が人を裁いてはならない」というキリスト教の教えへのアプローチには、死刑制度問題に対しての考えを見直してしまった人も少なからずいるのではないでしょうか。真の“絶望”を感じたことによって今の生活に対しての感覚も変わるかもしれません。
この作品をホラー映画だと思ってしまい、敬遠したままになっている方も多いでしょうが、そんな方にもイチオシ作品としてお薦めしたいです。